後期研修医科 カリキュラム心臓血管外科

目標・理念

循環器・呼吸器外科では、診療・教育上の目標・理念として以下の点を重要と考えています。

  • 患者の気持ちを尊重し、“患者の視点”を重視する。
    (たとえば、たとえ良い手術を行っても、そのことを詳しく説明しないと、 患者さんが満足するとは限りません。そのような患者の視点に気付くように支援したい。)
  • 若手医師の積極性・自発性を評価し、伸ばす。
    (間違いの指摘は後回しにして、型(指導医自身の型、レーゲル)にはめないようにしたい。)
  • 外科医としての“腕”を伸ばす。
    (特に、例えば胸腔鏡下手術や血管内治療など、未来につながる新しい技術の研修を支援したい。)
  • エビデンスやガイドラインを尊重する。
    (特に、例えば胸腔鏡下手術や血管内治療など、未来につながる新しい技術の研修を支援したい。)
  • 科学者としての観察眼・批判精神・学識を伸ばす。
    (臨床の場で、医者であると同時に科学者でもあるように支援したい。)

手術数

過去3年の実績で年間の心臓血管外科手術数として、85例~144例。
内訳としては、冠動脈バイパス術:40例、弁置換・弁形成術:30例、胸部大動脈瘤:15例、 急性大動脈解離:10例、左室形成術:3例、心房中隔欠損症:3例。 心室中隔穿孔:2例、 腹部大動脈瘤:20例、下肢動脈バイパス術:10例など

診療科概要

前期・後期研修において、高い手術技量を持ち、患者にやさしく、研究心に富んだ心臓血管外科専門医を養成することを目的とします。

指導のポイント

  1. 生命に直結する診療科であるため、高度の専門性・倫理性が要求される。それに応える医師としての基礎を固めることを支援する。
  2. 外科専門医ならびに心臓血管外科専門医の取得に必要な、手術経験や学会発表・論文発表が行えるように全面的な支援を行う。
    外科専門医HP
    心臓血管外科専門医HP
  3. 手術経験は実際の手術における経験のみでなく、動物を使ったウエットラボやドライラボも利用して手術技術の獲得を支援する。
  4. 専門医取得後の進路として、島根大学医学附属病院以外にも、関連する多くの施設へのアプローチを支援する。また海外留学の希望者にはその実現に向けて支援する。
    1. 島根県:松江赤十字病院心臓血管外科;島根県立中央病院心臓血管外科;松江市立病院心臓血管外科
    2. 北海道:北斗循環器病院心臓血管外科(札幌)
    3. 東京都:新葛飾病院心臓血管外科
    4. 長野県:相澤病院心臓血管外科
    5. 静岡県:岡村記念病院心臓血管外科;静岡県立総合病院心臓血管外科;静岡市立静岡病院心臓血管外科;静岡県立こども病院心臓血管外科;浜松労災病院心臓血管外科
    6. 滋賀県;大津赤十字病院心臓血管外科;滋賀県立成人病センター心臓血管外科;長浜市立長浜病院心臓血管外科
    7. 大阪府:大阪赤十字病院心臓血管外科;富永病院心臓血管外科;国立循環器病センター;市立岸和田市民病院心臓血管外科
    8. 京都府:武田病院心臓血管外科;洛和会音羽病院心臓血管外科;宇治徳州会病院心臓血管外科;国立病院機構京都医療センター心臓血管外科;三菱京都病院心臓血管外科
    9. 奈良県:近畿大学医学部奈良病院心臓血管外科;天理よろず相談所病院心臓血管外科
    10. 和歌山県:日本赤十字社和歌山医療センター心臓血管外科
    11. 兵庫県:神戸徳州会病院心臓血管外科;兵庫県立尼崎病院心臓血管外科
    12. 岡山県:倉敷中央病院心臓病センター心臓血管外科
    13. 広島県:あかね会土谷総合病院心臓血管外科
    14. 香川県:高松赤十字病院心臓血管外科
    15. 福岡県:社会保険小倉記念病院心臓血管外科
    16. 熊本県:熊本中央病院心臓血管外科
    関連する心臓血管外科施設一覧
  5. 研究に熱心な外科医(”Academic Surgeon”)を育てるため、大学院への進学も含め支援する。

現在の研究テーマ

  1. テネイシンファミリーの網羅的解析による循環器疾患の病態解明と新規診断・治療法の開発
  2. 高度低体温により誘導される蛋白質発現・リン酸化の網羅的プロテオミクス解析
  3. 全血液成分を対象とするプロテオミクスによる脳低体温療法に関する網羅的研究
  4. 開心術後の自律神経活動および心房細動・粗動発生に及ぼすβ遮断薬投与の効果についての検討
  5. 血管再生療法の研究
    (末梢動脈疾患患者に対するG-CSF 動員自家末梢血単核球細胞移植治療のランダム化比較試験)

後期研修プログラム

現在、心臓血管外科専門医認定機構の定める心臓血管外科専門医認定基準によりますと、申請資格として、日本外科学会認定医あるいは外科専門医であり、卒後修練期間7年以上が要求されています。
当科の研修の重要な目標の一つとして、この7年間(後期研修としては5年)に外科専門医並びに心臓血管外科専門医取得に必要な手術経験や学会発表、論文発表、学会参加などの単位の取得を考えています。
島根大学医学部附属病院での研修を基本としますが、以下の3つのプログラムを用意しています。それ以外にも各研修医の要望に応じたプログラムのカスタマイズが可能です。

(各年度における到達目標)

後期研修1年目

心臓手術や血管手術に助手として手洗いをして手術に参加する。また周術期管理に参加する。特に心臓血管外科手術に必要な基本的手術手技のうち、低難易度の手技の習得、周術期管理、人工心肺装置・補助循環法の理解・操作法をマスターすることを目標とする。またもし未取得であれば外科専門医取得のための研修に重点を置く。

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後期研修2年目

心臓血管外科手術に助手として手洗い、また低難易度血管手術に術者として手洗いする。また周術期管理に習熟する。心臓外科手術に必要な基本手術手技のすべてを(胸骨正中切開、開胸、送血管・脱血管挿入、上大静脈・下大静脈へのテーピング、ドレーン留置、一時的ペースメーカーワイヤー逢着、閉胸)をマスターすることを目標にする。低難易度血管手術の術者ができること、大伏在静脈の採取をマスターする事を目標にする。

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後期研修3年目

心臓血管外科手術に助手として手洗いし、また中難易度血管手術の術者として手洗いする。周術期管理チームに責任者として参加する。すべての心臓手術の助手ができ、下肢動脈バイパス術の一部、やりやすい症例で腹部大動脈瘤手術の術者ができることを目標とする。また、冠動脈バイパス術時に用いる内胸動脈、胃大網動脈、橈骨動脈グラフトの剥離・採取をマスターする。

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後期研修4年目

心臓血管外科手術に手洗いし、周術期管理を指導する。低難易度心臓手術の術者ができること、より難しい下肢動脈バイパス術の術者ができること、腹部大動脈瘤手術の術者としてより熟練することを目標とする。

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後期研修5年目

心臓血管外科手術に手洗いし、周術期管理を指導し、臨床研究を行う。中難易度心臓手術の術者ができること、臨床研究論文を1篇以上執筆することを目標とする。

修練終了時には、心臓血管外科という高度に専門的でやりがいのある外科分野を専門とする、高い倫理性と手術技術を備えた医師が養成され、さらに心臓血管外科専門医の資格の獲得も可能なプログラムとして運用します。

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注 【基本的外科手技】

  • 創部消毒、ドレーピング
  • 胸骨正中切開・右開胸・左開胸及び閉胸
  • 開腹・閉腹
  • 切開ドレナージ法
  • 胸腔穿刺、胸腔ドレナージ法
  • 心嚢穿刺、心嚢ドレナージ
  • 一時的ペーシング、永久的ペーシング移植
  • 埋没縫合
  • カットダウン
  • 末梢動脈縫合
  • 末梢静脈縫合
  • 下肢静脈採取
  • とう骨動脈採取
  • 内胸動脈剥離
  • 右胃大網動脈剥離
  • 末梢動脈露出
  • 静脈ストリッピング術
  • 人工心肺・PCPS操作

注 【周術期管理】

  • 創感染・感染対策
  • 周術期輸液管理
  • 中心静脈栄養
  • 経腸栄養
  • 循環管理(スワンガンツカテーテルを用いた)
  • 強心薬・血管拡張剤の使い方
  • 大動脈内バルーンポンピング(IABP)の挿入・管理
  • 経皮的心肺補助装置(PCPS)の挿入・管理
  • 心マッサージ(直接・間接)
  • 電気的徐細動(同期、非同期)
  • 心房・心室ペーシング(センシング・ペーシング)
  • 人工呼吸器管理・呼吸管理
  • 気管内挿管・気管切開
  • 持続血液濾過透析(CHDF)
  • 心臓超音波検査法の実践
  • 心臓カテーテル検査法の解析
  • 頚動脈・頭蓋内血管評価
  • 四肢の血流評価
  • チーム医療
  • 院内感染対策

学会・研究会における発表

  • 日本胸部外科学会
  • 日本心臓血管外科学会
  • 日本血管外科学会
  • 日本循環器学会
  • 日本冠動脈外科学会
  • 日本人工臓器学会など

収入

附属病院医員:
医員の給与、時間外手当、当直料で35万円程度/月
関連施設での日勤、当直で30~50万円/月
扶養家族の状況で相談に応じます。

関連施設でのレジデント:
施設の規定に従う

スタッフ

織田 禎二教授
資格:日本胸部外科学会指導医、心臓血管外科専門医、外科専門医、心臓血管外科修練指導医

藤本 欣史助教
資格:心臓血管外科専門医、外科専門医、心臓血管外科修練指導医

末廣 章一助教
資格:外科専門医

今井 健介助教
資格:外科専門医、心臓血管外科専門医

清水 弘治助教
資格:外科専門医

金築 一摩助教
資格:外科専門医、胸部・腹部ステントグラフト指導医

城 麻衣子助教
資格:外科専門医

伊藤 恵医科医員

関連する心臓血管外科施設

  1. 島根県:松江赤十字病院心臓血管外科;島根県立中央病院心臓血管外科
  2. 東京都:東京医科大学病院心臓血管外科
  3. 静岡県:岡村記念病院心臓血管外科;静岡県立総合病院心臓血管外科;静岡市立静岡病院心臓血管外科; 静岡県立こども病院心臓血管外科;浜松労災病院心臓血管外科
  4. 滋賀県;大津赤十字病院心臓血管外科;滋賀県立成人病センター心臓血管外科;
    長浜市立長浜病院心臓血管外科
  5. 大阪府:大阪赤十字病院心臓血管外科;国立循環器病センター;市立岸和田市民病院心臓血管外科
  6. 京都府:武田病院心臓血管外科;国立病院機構京都医療センター心臓血管外科;三菱京都病院心臓血管外科
  7. 奈良県:近畿大学医学部奈良病院心臓血管外科;天理よろず相談所病院心臓血管外科
  8. 和歌山県:日本赤十字社和歌山医療センター心臓血管外科
  9. 兵庫県:神戸市立医療センター中央市民病院心臓血管外科;神戸徳州会病院心臓血管外科;
    兵庫県立尼崎病院心臓血管外科
  10. 岡山県:倉敷中央病院心臓病センター心臓血管外科
  11. 広島県:あかね会土谷総合病院心臓血管外科
  12. 香川県:高松赤十字病院心臓血管外科
  13. 福岡県:社会保険小倉記念病院心臓血管外科
  14. 熊本県:熊本中央病院心臓血管外科

写真

大学内で行ったウェトラボ。
島根大学附属病院医師、医学部5年生、6年生が参加
島根県内の心臓血管外科医が集まって行ったウェトラボ。 島根県立中央病院の先生が松江赤十字病院の若手医師や附属 病院研修医に手術指導をしている(ビッグハートで開催)
島根県立中央病院の先生と島根大学医学部附属病院医師による僧帽弁置換術の手術練習を島根大学医学部学生が見学している
5年生を対象にした血管模型を用いた端―端吻合練習(2点支持、3点支持)風景
5年生に対する、糸結び、血管吻合練習の指導風景
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