島根大学医学部附属病院長 挨拶
椎名 浩昭(しいな ひろあき)
島根大学病院は2019年に開設40周年を迎えました。その理念「地域医療と先進医療が調和する大学病院」を遂行すべく、地域とより密着した地域完結型の高度医療を実践し、地域の中核病院としての役割を果たしております。高度外傷センターを核に県全域を対象とした外傷救急の実践、先進医療管理センターや再生医療センターの設置、PET-CTの新規導入とMRI増設など、先進的な医療を提供できる体制を構築しています。また、総合周産期母子医療センターを核として、島根県の周産期医療を担い、高齢化に伴い増加する疾患に対しては、高度脳卒中センターや総合ハートセンターで迅速に対応しています。一方、都道府県がん診療連携拠点病院として、がんゲノム医療センターや先端がん治療センターの活動を拡充し、CAR-T細胞療法を含む先進的医療とともに高機能放射線治療施設整備計画も行なっております。このように高度化する医療に対しては、大学病院の総合力を集約して発揮できるよう診療科を超えた横断的・柔軟な体制を整え診療を行なっております。研究面では、再生医療センターを拡充し再生医療に関する基礎医学系部門との共同研究を展開しています。また、新型コロナウィルス感染症に対する検査・治療法の開発など、基礎と臨床のシームレスな関係を維持しております。基礎研究で得られた知見を実際の臨床に還元することで、附属病院の役割を充実させ、臨床医学研究の基盤を整備しその活性化を図っています。このように当院では、基本的な知識や診療能の習得に加えてリサーチマインドを涵養しながら多方面からの研修が可能です。
一方、地域医療に関しては、大田総合医育成センターや県内の自治体病院による地域医療連携推進法人との連携を一層強化し、また厚生労働省事業の一つとして「総合的な診療能力を持つ医師養成推進事業」の展開により、地域社会の変化とともに柔軟に対応できる医療人を養成をしています。地域枠等義務を有する医師には、適用するキャリア形成プログラムを運用し、専門医取得に向けて全面的な支援を行います。そのために医師派遣に関する検討を附属病院全体で行い、医療圏ごとの勤務医あるいは開業医の年齢、性別、専門性を考慮した島根県の医師偏在マップを作成し、より実践的で活性化を図れる医師派遣を緻密に計画しております。
卒業後の最初の数年は、基本的な知識や技術を習得しながら、医師として考え行動する力を身につける大事な時期です。リサーチマインドを涵養しつつ国際的な視点に基づいて行動できる医療人を育成することが本センターの使命です。この医師人生において、最も根幹をなす時期に、当センターに所属する熱意ある指導医のもとで色々な出会いとともに医療人として第一歩を踏みだしましょう。