指導医からのメッセージ(医科)
総合医療学講座 牧石徹也
どこで研修するかはもちろん大事ですが、そこで自分が何をどれだけ学ぶかがより重要だというメッセージを、応援とともに届けさせてください。「どこでもいい」ではなく、「場所に縛られ過ぎるな」という意味です。もちろん、島大病院は素晴らしい研修先です。具体的には他の先生方のメッセージをご参考になさってください。
美味しいラーメンを作れるようになるには評判のよいラーメン屋で修行すべきだというのは至極もっともな考えです。ですがそこには、修行先に『評判のよいラーメン屋』を選びさえすれば後は大丈夫とか、有名店で修行してきた彼や彼女に自分は敵わない、といったいささか他力的な含意が読み取れなくもありません。修行者としての『自分』の学びに対する姿勢を軽視してしまうリスクを孕んでいるように感じます。
『ファイト』(作詞作曲:中島みゆき)という歌をご存知でしょうか?歌詞の出だしを少し紹介させてください。メロディとともに口ずさめる方も多いと思います。
🎵あたし 中卒やからね 仕事をもらわれへんのや と
書いた女の子の手紙の文字は とがりながらふるえている
この歌詞はフィクションではなく、実際に元となったエピソードがあるようです。中島みゆきがパーソナリティを務める深夜ラジオ番組にある日葉書が届きます。そこには、中卒だからという理由で仕事を任されず、自分だって高校行きたかったけれど家庭の事情もあり叶わなかった、この感情とどう向き合えばよいか、といった相談内容が(おそらく尖りながら震える文字で)綴られていました。それに対して中島みゆきは次のように答えます。
“あんたがどこを通って来たかってことより、
そこであんたが何を学んで来たかってことの方が大事なんじゃないかな。”
私は医学部受験では第一志望校は不合格、医学生時代には『米国臨床留学』に憧れて色々準備をしましたが、結局それも叶いませんでした。その他にも多くの挫折を経験し、遠い昔に思い描いていたキャリアパスとはかなり違う道を歩んで来ました。一方、その途上で素晴らしい上司、同僚、後輩、職場仲間に恵まれ、結果的に「全身の見れる医者になりたい」という当初の目標には近づきつつあるように思っています(まだ当分辿り着けなさそうですが)。そして今でも、研修医と多くの患者さんのお陰で日々成長を実感しています。叶わなかった憧れを劣等感ではなく謙虚さに変える分別も少しは身について来たように感じます。
皆さんは研修医時代に、何を、どれだけ、学ぶことができるでしょうか?もしも島根大学病院を選ばれたなら、万年研修医の私もぜひ一緒に勉強させてください!代わりに美味しいラーメンをご馳走しますよ。
呼吸器・臨床腫瘍学 濱口 愛
こちらのページを覗いてくれた学生の皆さま、はじめまして。島根大学医学部内科学講座呼吸器・臨床腫瘍学の濱口愛です。私は岡山県の出身ですが、受験生時代に出雲大社にお参りに行ったのがご縁となり、島根大学医学部(当時は島根医科大学でした)に入学しました。そのまま島根大学医学部附属病院で研修を行い、今は肺がんや呼吸器疾患(喘息や肺炎、最近ならCOVID19も!)をもつ患者様に寄り添いながら呼吸器内科医として、日々診療を続けています。
皆さん、医者になったら「都会の最先端の病院で最先端の治療を学びたい」と思っていませんか?でも、果たして都会の病院だけで最先端の治療が学べるのでしょうか。もちろん都会に有名な医者がいて、その技術を学びたいのであれば、その病院で研修をすべきでしょう。でも、そのような具体的な目標があるわけではなく、漠然と「都会の方が田舎より良い」と思っているなら、もっとより良い選択肢が皆さんにはあるかもしれません。
日本は今、急速に高齢化が進んでいます。そして島根県の高齢化は日本全体の更に一歩先をいっています。これはすなわち、臨床・そして研究の面で日本全体の一歩先をいくことができる立地に、島根大学医学部附属病院はあるということです。 呼吸器内科はその性質上、高齢の方とお付き合いすることが多い診療科ですが、高齢の方を対象とした臨床研究もたくさん行っています。その成果を全国学会で発表すると、「島根は高齢者にもこんなにしっかり治療をしているの!?」と驚かれます。都会の病院でこれから迎える超高齢化社会を、すでに私たちは経験しており、「都会の最先端の病院」にそのノウハウを提供する立場にあるのです。私たちは、高齢者の癌・高齢者の呼吸器疾患についてはスペシャリストであると自負しています。そして、その自負はひとえに島根の元気な高齢者の皆さまのおかげで育まれたものだと思っています。
研修先、そしてその先の診療科を選ぶときに、「将来自分がどうなりたいか」をまずは考えると思います。そこへ「将来、日本の医療はどうなるのか」も(難しいですが)一緒に考えてみてください。皆さまが将来、日本の医療に必要とされる医師になるためのヒントが島根大学医学部附属病院にはあるかもしれません。 一緒に働ける日がくるのを楽しみにしています!
脳神経外科学 助教 吉金 努
こんにちは。島根大学医学部脳神経外科学講座の吉金努と申します。
私は島根県松江市出身で、地元の高校を卒業後そのまま島根大学医学部に入学しました。初期臨床研修は1年目を国立病院機構浜田医療センターで、2年目は島根大学医学部附属病院で行いました。脳神経外科医になった理由は2つあり、「寝たきりを減らしたい」ということと「自分にとって直に人のためになることの究極の形が『手術』」と考えたためです。ただ、学生のころに漠然と持った脳神経外科へのイメージは、「脳を扱うため、非常に責任が重大」ということと「術者は一人,自分は適しているのか」ということでした。少し躊躇した時期もありましたが、実際に始まってみると非常に教育熱心で責任感の強い先生方に出会え、本当に充実した研修をさせて頂きました。現在は開頭手術を担当し、その傍らで全国の主に若手の脳神経外科医を対象としたオンデマンドによる手術手技教育講座を行う場を頂いております。
脳神経外科の魅力については、当講座ホームページに記載しておりますので今回は割愛し、ここでは私が考える①当大学における研修の特徴と②研修を行う上での心構えを述べたいと思います。
①当大学における研修の特徴
まず当大学が位置する島根県は秋田県に次いで高齢化が進んだ地域であるため(令和元年 10月1日調べ)、この地で臨床経験を積むことで、高齢の患者さん特有の病態にも適切に対応できる力を身に付けることができます。また病態だけではなく、高齢の患者さんのその時々の状況に応じた治療を検討する機会にも恵まれています。具体的には、「病気を治すこと」より「健康に安心して寿命を全うすること」に重きを置いた治療を提供することです。病気を治すことに固執した結果、副作用(合併症)が生じれば、その後の人生は辛いものになります。患者さん自身の全身状態や形成された死生観も含めて検討することで、オーダーメイドの治療をご提供できるものと感じています。勿論、高齢の患者さんだけではなく乳児から全ての患者さんにとって当大学病院は島根県の最後の砦と考えられ、また我々も自負し診療にあたっていますので幅広く・バランスよく経験を積むことができます。また退院後の経過を長くフォローできるため、自宅での生活や取り巻く環境なども含めて学べる点も当病院で研修を行う非常に大きなメリットと感じます。
②研修を行う上での心構え
私は脳神経外科を専門にしているため他科のことは詳しくは存じ上げませんので、一脳神経外科医の考えとしてご理解下さい。
私自身は「私が病気を治して、患者さんを健康にした」とは毛頭感じておりません。これは私が師事を仰いだ世界トップクラスの手術の腕を持った先生が「手術を行い、実は我々の気づいていない部分でトラブルがあったとしても、患者さん自身の持つ自己治癒力のお陰で表に出てきていないだけ(良い結果になっている)ケースが多いのではないか」と仰っていたことが根本にあります。医療はあくまで患者さんの持つ「自己治癒力」をサポートしている、と考え医療を過信せず、謙虚な姿勢で臨床にあたることが大事なのではないかと思っています。
また自身が行った治療が想定外の結果になり、如何なる理由が考えられたとしても言い訳をしないことが極めて重要です。治療を行った限り責任は行った者にありますので、できることを一所懸命に迅速に実施し、同じようなことを繰り返さぬように復習し成長することが治療を行うものの責務と信じております。
長くなりましたが、どこの病院にも色々な人がいて、また病院ごとに研修の特徴があり、如何なる研修内容であっても研修する先生自身の捉え方で良くも悪くもなります。ただ、長い医師生活の中でも最初の2年間は特に重要と考えられておりますので、島根大学で患者さんに寄り添った医療をともに提供し、成長できることを願っております。
卒後臨床研修センター 助教(現 総合診療医センター 准教授) 和足 孝之
こんにちは、雑多な臨床・臨床教育・臨床研究が三度の飯より好きな和足(WATARI)と申します。当院は日本を代表する教育のリーダーとなるべく日々変化と進化を遂げながらみんなで頑張っているちょっと珍しい大学病院です。皆さんは、どういう医師になろうと思っていますか?初期だけでなく後期研修医も見据えた皆様の答えはそれぞれであると思います。そしてその思いにこたえる指導体制も病院によって多分それぞれ違います。
ここ島根大学には他の国立大学病院にはまず無い最強の長所が3つあります。一つ目は穏やかで熱心な指導医が多い事。大学病院に赴任して驚いたことに、アホ(A)・ボケ(B)・カス(C)が当たり前であった自分の研修医時代に比べて、不必要な人間関係のストレスが全く無いです。なぜこんなに指導医が穏やかなのか、多分それはトゲトゲする必要がない大自然と出雲大社に護れた雰囲気の妙なのでしょう。二つ目はコモンディーズの暴露と処置や手技等の経験の多さ。大学病院でありながら市中病院の顔も持ち合わせ救急搬送も受け入れ続けている当院は良い臨床研修を行う土壌があります。 三つ目は、大学だからこそ持つ最強のアカデミックコンテンツ。肺や心臓聴診、心臓エコー、麻酔や内視鏡のシミュレーション学習は当たり前。Evidence Based Medicineをちゃんとやるために最も大事なツールであるUPTODATE、今日の臨床サポート、Procedure consult等の個人ID無料配布はもちろん、ケアネットオンラインの無料学習、何よりPubmeや医中誌で文献ダウンロードし放題であるので突っ込んだディープな自己学習も可能です。もちろん、英語での論文発表や国際学会発表もいとも簡単に出来てしまう環境は中々ないと思います。自分は遅まきながら、それを求めて島根大学にやってきました。数多くの研修医と接した経験からは、臨床研修の善し悪しは病院のブランドや立地ではなく、自分次第のやる気と人間力で決まります。暖かい人、豊かな自然、神がかった出雲の空気の下、楽しく研修してみませんか!?
高度外傷センター 助教 下条芳秀
私は長崎県壱岐市出身で、平成15年に島根大学(旧島根医科大学)を卒業しました。現在は高度外傷センターでAcute Care Surgeon(急性期・外傷外科医)として楽しく働いています。
私は市中病院で初期研修を終えた後、当院と他大学病院で外科医・救急医として勤務してきました。その中で多くの研修医の先生と関わってきました。卒後16年目となる現在、初期研修で身につけるべきものは「医師としての責任感」と「キャリアプランを実現させる力」であると考えています。島根大学医学部附属病院にはその両者を身につけるには非常に良い環境があります。当院はHPにあるように、「地域医療と先進医療が調和する大学病院」です。救急医でもある私は多くの医師、コメディカルスタッフとコミュニケーションをとりながら日常診療を行っています。多くのスタッフには“島根県の最後の砦”という自覚があり、その雰囲気の中で地域医療と先進医療を同時に経験できます。
最後に、初期研修を有意義なものにするかどうかは研修病院ではなくあなたです。あなたの医師人生をさらにプラスに転じる出会いがここにはきっとあるはずです。