後期研修医科 カリキュラム内分泌代謝内科
目標・理念
1) 内分泌代謝・糖尿病に関わる疾患は全身のあらゆる部位に障害を生じる疾患であることから、現在の前期臨床研修に引き続いて、特に内科系疾患について幅広く対応できる臨床力に磨きをかけながら、内分泌代謝領域の専門医としての臨床能力を獲得する。
2) 大学病院の特性を活かし、基礎医学的な視点からもこれらの疾患を眺め、その病態を解明・理解し治療にあたれる医師を育成することを目標とする。
3) この研修課程で日本内科学会認定内科医の資格を基盤に、日本内分泌学会内分泌代謝専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本甲状腺学会専門医、日本動脈硬化学会専門医および日本内科学会内科専門医を取得可能な研修を行い、生活習慣を背景とする内分泌代謝疾患および糖尿病診療を中核とした全人的医療を行い社会に貢献する人材を育成することを目標とする。
診療科概要
医学、医薬品、医療技術の進歩により、多くの急性疾患が治療可能となりましたが、一方では生活習慣病のような慢性疾患の患者さんが増加し続けています。現代の医師にはこれら慢性疾患の病態生理に対する幅広い知識が求められるとともに、生活習慣改善等の医療情報を適切に患者さんに提供し、前向きに治療に取り組んでいただくよう仕向ける会話・指導力や、時にまぎれ込んでいる重大な内分泌疾患を見いだす観察力等を備えていることが望まれています。この診療能力は一朝一夕に得られるものではなく、接する機会の多い慢性疾患であっても症例を一つひとつ丁寧に病因・病態を解明しようとする思考トレーニングと、患者さんと対話しながら協調的に治療を進めていく経験を通してのみ獲得しうる高度な医療技術であり、生涯にわたり発揮可能な専門技術と我々は考えています。
当科は狭義の内分泌疾患と代謝性疾患の両方を分け隔て無く研修が可能で、臨床上の疑問を追究することができる研究施設を備えた、国内でも貴重な研修機関です。内分泌代謝領域に興味を持つ研修医のみなさんのみならず、家庭医や地域医療を志す研修医のみなさんにおいても、当科の研修終了後にはその後の臨床力の飛躍的向上に必要な基礎的素養が獲得されていると確信しています。
このような能力を獲得するために、我々はひとりの研修医に対し、上級医や指導医とともに診療を行う体制をとっています。研修医と上級医・指導医は日々ミーティングを行い、日常的に生じる疑問や問題点に対し、研修医の目線に近い上級医と幅広い臨床経験を持つ指導医の異なった視点から指導を受けることができます。内分泌代謝疾患や糖尿病に関わる医師・コメディカルが定期的に集まり、患者の病態把握・治療方針を検討するグループカンファレンスを行い、また印象的な症例を議論する症例検討会が定期的に開かれおり、研修医の学習の場を提供しています。
内分泌代謝疾患の診療は、臨床症状をヒントに検査を行い、原因となる機能異常を明らかにし、それを改善する手段を提供する診療科です。糖尿病や甲状腺疾患のように日常的に接する機会が多い疾患のみならず、遺伝子異常などに基づく特定の受容体の異常に起因するような頻度の少ない疾患にも対応できるためには、病態解析や機能改善する手法を学ぶ必要があります。このような臨床能力を向上させる手段として、後期研修中に基礎研究に取り組む機会を用意しています。当科の研修を終了する頃にはみなさんは、後期臨床研修終了後の生涯にわたり臨床力の礎となる能力を得ていることでしょう。
後期研修プログラム
当科では専門医育成プログラム関連施設として、日本内分泌学会、日本糖尿病学会、日本甲状腺学会、日本動脈硬化学会の認定研修施設に認定されており、それぞれ日本内分泌学会内分泌代謝専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本甲状腺学会専門医、日本動脈硬化学会専門医の資格を取得することが可能です。いずれの分野の疾患も重要と考えており、後期臨床研修1年次(卒後p3年目)は内分泌代謝および糖尿病領域のいずれも入院主治医として担当していただきます。後期臨床研修2年目以降は、研修医の皆様のご希望に応じた研修に対応することが可能です。
後期研修1年次(卒後3年目)
上級医または指導医とともに、入院患者の主治医として入院患者の診療を担当します。
内分泌代謝領域では各々の内分泌代謝疾患におけるホルモンの合成・分泌・輸送・代謝・生理作用と生理機序およびフィードバック調節について理解することを基本に、各疾患でのホルモン動態を理解し主症候から内分泌代謝疾患の鑑別診断ができること、疾患における特徴的な症候を診察し記載できること、内分泌に関する負荷試験などの特殊検査の立案ができることを目標にします。
糖尿病領域ではインスリンの分泌・作用やインスリン抵抗性などの病態の理解を基本に、これらの異常による症候を診察し記載できること、食事療法・運動療法および薬物療法などの糖尿病治療法の立案ができること、糖尿病合併症の診断に関する検査が立案できることを目標にします。
学会活動では、学会や研究会に出席して専門領域の全体像をつかむとともに、症例報告を通じて報告書の作成法や学会活動について学びます。
後期研修1年次(卒後3年目)を開く
後期研修2年次(卒後4年目)
後期研修1年次に引き続き、上級医や指導医とともに入院患者の主治医として入院患者の診療を担当します。研修医のみなさんの専攻希望を配慮し、専門医取得に必要な経験すべき症例を受け持っていただきます。担当症例の疑問点を大切にし、病態について考察する基本姿勢を身につけます。
内分泌代謝領域では、鑑別すべき疾患に必要な内分泌代謝機能検査を選択・施行し評価できる、内分泌に関連する画像検査を選択し読影できることを目標にします。
糖尿病領域ではインスリン治療に習熟すること、1型糖尿病や重度な合併症を有する糖尿病や高齢者糖尿病、周術期の血糖管理など、治療・管理難度が高い疾患を自立して行えることを目標とします。
研究面では、臨床中に出くわした疑問を出発点に、指導医とともに臨床研究や基礎研究に取り組み始め、これらを明らかにするための手法を学びます。 学会活動では1年次に引き続き、担当症例の症例報告を通して病態考察力に磨きをかけ、症例報告論文に取り組みます。
後期研修2年次(卒後4年目)を開く
後期研修3年次(卒後5年目)
指導医とともに入院患者の主治医として入院患者の診療を担当します。研修医のみなさんの専攻希望領域のなかでも難度の高い症例に取り組んでもらいます。また臨床研修1年次または2年次の専門医志望者の教育・指導に指導医とともに関わります。担当症例を生理して各種学会の認定医・専門医取得の準備を行います。
内分泌代謝領域では疾患毎に適切な治療法(ホルモン補充療法・抑制療法、外科的治療や放射線療法)が選択・実施できること、内分泌緊急症(クリーゼ)の治療が実施できることを目標とします。
糖尿病領域では妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠の管理、糖尿病性昏睡の急性期などの治療が自立して行えること、糖尿病教室の講師を担当し患者教育活動を行えることを目標にします。
研究・学会活動では、前年度の臨床研究や基礎研究の取り組みをまとめ、専門領域の学会の学術総会での発表をめざします。英文での研究報告書の作成に取り組みます。
後期研修3年次(卒後5年目)を開く
週間予定
月 | 13:30-14:30 | 糖尿病カンファレンス |
---|---|---|
14:30-15:30 | 他科糖尿病回診 | |
18:00-19:00 | 研究カンファレンス・抄読会 | |
火 | 8:30-12:00 | 入・退院報告、病棟総合回診 |
14:00-16:00 | 症例検討会 | |
16:00-18:00 | 研究報告 | |
水 | 13:00-17:00 | 甲状腺超音波検査 |
18:00-19:00 | 内分泌代謝カンファレンス | |
木 | 13:00-14:30 | 他科糖尿病回診 |
専門医育成プログラム関連施設
日本内分泌学会認定教育施設
松江赤十字病院 糖尿病・内分泌内科、 慈誠会山根病院 内科
日本糖尿病学会認定教育施設
松江赤十字病院 糖尿病・内分泌内科、 松江市立病院 糖尿病・内分泌内科、 島根県立中央病院 内分泌代謝科、 慈誠会山根病院 内科