後期研修医科 カリキュラム脳神経外科

目標・理念

脳神経外科とは脳、脊髄、末梢神経系およびその付属器官(血管、骨、筋肉など)を含めた神経系全般の疾患のなかで主に外科的治療の対象となりうる疾患について診断、治療を行う医療の一分野で、基本診療科の一つになります。この脳神経外科に関して臨床・教育・研究の3本柱に立脚した上で安全で質の高い医療を提供することが当施設の根本的な考えです。

診療科概要

当施設では大学附属病院として高度先進医療を提供しており、島根県全域から脳神経外科の診断や治療を希望されて数多くの患者さんが来院され、島根県の地域医療に貢献しています。現在1年間あたりの患者さんの数は、外来;約6,000人(月平均500人)、入院;約400人、手術件数;約300件です。脳神経外科医一人あたりの手術件数は年々増加しています。当施設では、手術用顕微鏡、脳神経血管内治療、手術ナビゲーションシステム、神経内視鏡装置、超音波メス、レーザーメス、神経刺激装置、小型超音波機器など最新の医療機器や技術を導入し、低侵襲で安全な診療を行っており、好成績を収めています。
当診療科の専門分野は次のものです。(1)血管障害(脳卒中):くも膜下出血(脳動脈瘤、脳動静脈奇形)、脳内出血、脳梗塞、ほか。(2)脳腫瘍:良性腫瘍(髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、ほか)や悪性腫瘍(神経膠腫(グリオーマ)、リンパ腫、転移性脳腫瘍、ほか)。(3)頭部外傷:脳しんとう、頭蓋骨骨折、髄液漏、外傷性頭蓋内出血、慢性硬膜下血腫ほか。(4)機能的神経疾患:てんかん、片側顔面けいれん、三叉神経痛、難治性疼痛ほか。(5)脊椎・脊髄:頸椎椎間板ヘルニア、頸部脊柱管狭窄症、脊髄腫瘍、ほか。(6) 中枢神経形成不全:水頭症、くも膜嚢胞、2分脊椎、脊髄空洞症、ほか。(7)その他:定位放射線治療などに対しても積極的な治療を行っています。
特徴として毎週火・木曜日に脳神経血管内治療を施行しており、頸動脈ステント術、経皮的脳血管形成術、脳動脈瘤塞栓術、脳(硬膜)動静脈奇形の塞栓術、脳腫瘍塞栓術、脳腫瘍に対する選択的化学療法などを行っております。頸動脈狭窄に対する血管内治療(頸動脈ステント留置術)は、過去5年間に187例を施行し、治療合併症(治療に伴う脳梗塞発症)1.6%、脳動脈瘤の治療については、血管内治療と手術を使い分けることで、過去5年間に148例を施行し、手術合併症1.4%の治療成績です。
平成28年4月から山陰で唯一の機能的脳神経外科手術実施施設となりました。

各専門医資格取得について

現在スタッフは8名で、うち日本脳神経外科学会専門医は5名です。他に、日本脳神経血管内治療専門医2名、がん治療認定医2名、日本脳卒中学会専門医3、機能的外科専門医1がいます。専門医として脳神経外科は基本診療科に認定されています。近年、基本診療科の中でさらに細分化され、各小領域の専門医を養成するようになりつつあります。当施設の方針として、脳神経外科専門医資格を取得した後に、さらに各種の細領域の専門医資格の取得ができるように取り組んでいます。現在、専門医資格を取得するにはそれぞれ学会に一定の期間以上所属している必要があり、専門医資格取得のためには、大学卒業後から学会に所属することが有利です。

研究活動について

当施設は、生物系と生理学系を柱とする2つの独自の研究室を有しています。研究の成果は、Journal of Neurosurgery, Nature Medicine, Cancer Research, Neurological Research, Epilepsy Research など、各分野での国際的学術誌に掲載されております。博士課程に進むことを希望される場合には前期研修終了以降、研究課程へすすむことができます。

留学制度について

専門性を深め、国際性を身につけるために海外留学の機会が与えられています。これまでの主な留学先は、イリノイ大学、米国立衛生研究所(NIH)、ピッツバーグ大学、テキサス大学、カナダトロント大学、MDアンダーソン癌センターなどです。留学先でスタッフとして採用されたものもいます。

関連施設について

松江市立病院、独立行政法人国立病院機構浜田医療センター、大田市立病院、雲南市立病院、社会医療法人石州会、六日市病院など県内の基幹病院の脳神経外科施設と連携し、東西に広い島根県の地域医療に貢献しつつ、医師としての研修に十分な症例数を経験出来る体制を整えています。また、県外にも日本脳神経外科学会専門医認定訓練制度による指定研修施設を関連病院として有しています(東京女子医科大学、国立循環器病研究センター他)。他大学や脳神経外科の専門病院とも提携しています。

後期研修プログラム

卒後研修(後期研修)

脳神経外科医師に必須の各検査、手術手技について指導します。

  • 手術手技

    穿頭手術(脳室ドレナージ、定位的脳手術、脳室腹腔シャント術ほか)、開頭手術(開頭手技、閉頭手技、頭蓋形成術ほか、顕微鏡手術)をマスターします。専門医取得後に脳腫瘍や脳動脈瘤の手術をマスターします。

  • 顕微鏡手術

    当研究室の手術用顕微鏡でトレーニングを行います。

研修プログラムとして、東京女子医科大学(東京)、独立行政法人国立循環器病研究センター(大阪)、医療法人清仁会シミズ病院(京都)、社会医療法人祥和会脳神経センター大田記念病院(広島)、禎心会病院脳卒中センター(北海道)、島根県立中央病院を研修関連施設としており、都市部の第一線病院や研究施設での研修もローテーション方式で行って学閥の枠にとらわれない学べる研修プログラムとしています。

定期カンファレンス

  • 症例検討会を兼ねた教授・准教授による総合回診(週1回水曜日)
  • 病棟医長回診(週1回月曜日)
  • 早朝カンファレンス(木曜日以外)
  • 英文学術誌抄読会(毎週金曜日)
  • 神経病理検討会(毎週水曜日)
  • リハビリテーション部との合同カンファレンス(毎週月曜日)
  • 腫瘍科合同カンファレンス(毎月不定期)
  • 神経内科との合同カンファレンス(不定期)
  • 放射線治療科との合同カンファレンス(不定期)
  • Vascular Lab カンファレンス(毎月1回)
  • 器官病理学講座との合同カンファレンス(不定期)

写真

マイクロサージャリー
最新の手術・ナビゲーション機器を駆使
脳神経血管内治療の様子
脳動脈瘤は、発生部位、大きさ、形、患者さんの年齢などに応じて、手術で治す方法と、血管内治療で治す方法の2つを使い分けて治療しています。血管内治療では、動脈瘤の根元を風船やステントで塞ぐ特殊な方法(バルンリモデリング、ステントリモデリング)を用いることで、手術では治療の難しい動脈瘤の治療も可能になっています。
2008年4月から施設限定で保険収載された新しい治療法です。従来は頸動脈が狭くなって生ずる脳梗塞に対して、頸動脈を直接切開して血管壁に貯まったコレステロールの塊を摘出して血管を拡げていました。頸動脈ステント血管形成術では足の付け根に2ミリ程度の切開を行い、そこから風船を誘導して狭くなった頸動脈を拡げます。当施設では2002年から本治療法を導入し、良好な治療成績を治めております。
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