後期研修医科 カリキュラム放射線治療科

目標・理念

我が国の死因の第一位であり、増加の一途をたどる「がん」。 今や国民的課題のがん治療ですが、放射線治療科は臨床各科と共同して、低侵襲でQOLを高く保つがん治療を目指し、良質な放射線治療を提供するよう日々研鑽を続けています。

放射線治療科は、放射線全般と放射線治療に関する深い専門知識と、腫瘍学に関する幅広い知識を持ち、患者さんに正面から真摯な態度で向き合える放射線腫瘍医を育成します。後期研修プログラムでは、画像診断やinterventional radiology (IVR: 放射線診断手技の治療への応用)を専門とする放射線科との密接な連携で、放射線診療全般の幅広い診療の基本と放射線治療についての高度な専門的知識の両方を効率的に研修することが可能です。

診療科概要

高精度な体外照射のほか、密封小線源リモートアフターローダーによるRALS治療、前立腺癌に対する密封小線源永久挿入療法、非密封放射線療法(甲状腺疾患や有痛性骨転移に対するアイソトープ治療)など、さまざまなモダリティの放射線治療をおこなっています。院内外の臨床各科と協力して、化学療法・手術などと組み合わせた集学的治療を積極的に行っています。また、緩和ケアチームとの密接な協力のもと、がんの症状緩和を目的とした、患者さんのQOL(生活の質)を重視する緩和的放射線治療にも熱心に取り組んでいます。当院は山陰唯一の日本放射線腫瘍学会(JASTRO)認定施設として、当地のがんの治療成績向上と均てん化に貢献しています。

平成17年10月からは山陰では初となる前立腺シード永久挿入療法を開始し、平成18年4月に放射線治療システム更新にともない脳定位放射線治療を開始し症例を重ねています。平成21年からは体幹部定位放射線治療と強度変調放射線治療(IMRT)、CD20抗原陽性悪性リンパ腫に対する放射性免疫療法を開始するなど、さらに高精度で副作用の少ない放射線治療の提供を目指しています。 写真:シード治療、新リニアックなど)

カンファレンス

放射線治療部門で頻回におこなう定例症例検討カンファレンスを通じて、卒後教育の充実と情報の共有、安全性の向上を図っています。これに加えて、チーム医療を重視する立場から、診療各科と定期的カンファレンスを多数開催しています。カンファレンスでは治療方針の決定、放射線治療中や終了後患者の報告、プロトコールの検討などを行っています。

定例カンファレンス一覧:

  • 放射線治療部門カンファレンス(放射線腫瘍医・放射線技師・医学物理士・看護師・がん相談員)週2回
  • 脳定位照射カンファレンス(脳神経外科)随時
  • 頭頸部カンファレンス(耳鼻咽喉科・歯科口腔外科)3 週に 1回
  • 甲状腺カンファレンス(内分泌代謝内科、耳鼻咽喉科)3 週に 1回
  • 胸部カンファレンス(呼吸器外科・呼吸器内科・病理)月 1 回・その他随時
  • 肺カンファレンス(呼吸器内科)2週に1回
  • 乳腺カンファレンス(乳腺外科・病理)月 1 回
  • 婦人科カンファレンス(婦人科・病理)月 1 回
  • 前立腺シードカンファレンス(泌尿器科)随時
  • 消化器カンファレンス(消化器総合外科・消化器内科・肝胆膵外科)随時(ほぼ毎週)
  • リンパ腫放射性免疫療法カンファレンス(血液内科・薬剤部)随時
  • 腫瘍科カンファレンス(腫瘍科・臨床各科・病理)随時
  • 緩和ケアチームカンファレンス 毎週火曜日

病棟診療

RI 病床4床を有し、甲状腺癌のアイソトープ治療や前立腺癌のシード永久挿入療法の患者さんを受け入れています。

週間予定

月‐金曜日 午前 外来(初診・再診)
月曜日 午後 治療計画
火曜日 午後 密封小線源治療、放射線治療カンファレンス
(医師・技師・看護師)
水曜日 午後 治療計画
木曜日 午前 放射線治療カンファレンス(医師)
午後 治療計画
金曜日 午後 密封小線源治療、放射線治療カンファレンス(医師)、医師会

県内外での勤務

放射線治療装置や照射技術の急速な発展と、がん診療における放射線治療の重要性の高まりにより、放射線治療を専門とする放射線腫瘍医の需要が非常に高まっています。当科では、島根県内の基幹病院の他、県外の中核病院にも放射線腫瘍医を派遣しており、専門性の高い診療を提供しています。

後期研修プログラム

後期研修プログラムは初期卒後臨床研修において基本的な診療能力を身に付けたレジデントを対象に、放射線腫瘍医になるための専門的な知識と技術の習得を目的としています。放射線腫瘍医は、放射線治療に関する専門性の高い知識・技能と、全身のがん治療に関する幅広い知識を併せ持つ専門医です。放射線腫瘍医になるための研修の過程で、放射線治療の理論や放射線生物学的事項、各がん腫の放射線治療に関する専門知識、がんの画像診断を主とする放射線画像診断能力、全身の各がん腫に関する腫瘍学の知識、緩和医療や化学療法、放射線物理学等について実践的に学ぶことができます。 放射線治療機器の進歩も目覚ましく、最新の医療機器を駆使して患者様のがんを治療する醍醐味も魅力の一つです。当科での後期研修には、一般入局あるいは大学院入学を前提条件とします。一般入局者は臨床経験の蓄積と 放射線治療領域の専門医・認定医の取得を当初の目標とします。大学院入学者はこれに加えて臨床研究、論文作成を行い在学中の学位取得を目指します。

一般入局

後期研修最初の3年間では放射線治療科での専門研修に加え、放射線腫瘍医となるために必要な画像診断の基礎知識・技能を習得することが必要です。3年間の研修後日本医学放射線学会専門医受験資格を得ます。画像診断に関しては当院放射線科の他、県内外の研修協力病院での研修により、幅広く内容の濃い研修が可能です。 放射線科専門医試験合格後から放射線腫瘍医となるための専門的な研修に従事し、日本医学放射線学会放射線治療専門医(入局後最短6年目)・がん治療医認定機構によるがん治療認定医(入局後最短3年目)、日本核医学会専門医などの取得を目指していただきます。症例の多い放射線治療専門施設での研修も可能です。

一般入局についてを開く

後期研修の到達目標

  • 放射線腫瘍学に関する基礎知識の習得
  • 放射線治療の基本知識と診察手技の習得
    :放射線治療の適応の検討、放射線治療計画立案や患者診察
  • 画像診断・放射線の基礎知識・読影技能の習得。
    :単純X線写真、X線透視・造影検査、CT、 MRI、核医学の原理や適応の理解。
  • 病棟診療の基本知識と診察手技の習得。
    :担当患者を受け持ち、ステージング、放射線治療計画、インフォームドコンセント、副作用対策などを担当。
  • 放射線防護の基本知識の習得
    :放射線被曝や防護についての知識習得。
  • 臨床研究
    :症例報告、学会発表、自分が担当した症例に関する論文作成、学会報告。

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取得可能な専門医・認定医

  • 放射線科専門医・放射線治療専門医
  • がん治療認定医
  • 核医学専門医(PET認定医を含む)

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臨床研究

当科では積極的に臨床研究を行っています。一般入局者でも臨床研究に積極的に参加して研究業績を積むことにより、大学院入学者と同様に学位取得が可能です。

主な研究内容
  • 放射線治療単独、集学的治療による臨床研究
  • 放射線治療効果や副作用に関する画像的検討
  • 線量測定法やQAの開発
  • 温熱療法の研究(加温法や温度測定法の開発など)

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大学院進学

目標

大学院進学者は、研究者としての基礎的素養を身に付け、在学中の学位取得を目標に研究を進めると同時に放射線科専門医資格の取得を目指します。

研究テーマ、研究環境

研究開始に当たっては、本人との十分な相談の機会をもち、各個人の適性に応じた研究テーマを設定する。本人の希望があれば国内留学や基礎医学講座での研究、社会人大学院への入学なども可能であり、研究に専念できる環境を整えます。

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後期研修でローテーション可能な病院(※2011.6.1現在)

島根県内

治療&診断
島根県立中央病院、松江市立病院、浜田医療センター

島根県外

治療
神戸低侵襲がん医療センター

治療&診断
横須賀共済病院、天理よろづ相談所病院、倉敷中央病院、神奈川県立がんセンター

特殊施設
兵庫県立粒子線医療センター(粒子線治療のみ)

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写真

スタッフ
新ライナック装置
前立腺シード治療後の単純X線写真
前立腺がんIMRT治療計画画像
診療科一覧