後期研修医科 カリキュラム放射線科

目標・理念

最大の診療効果を最小の侵襲で得るために、深い専門知識を持ち、診療には常に真摯な態度で臨む事。 これが当科の理念です。

この理念の実現のため、放射線科の最大の手段である画像診断・IVRにより適切な診療を提供できる十分な知識と技術を持つ医師を育成すること。 さらに医療者からも患者さんからも厚い信頼を享受できる人間性の医師に育成することを目標としています。

診療科概要

放射線科診療は近年になり極めて高度に発展しました。もはや今日の医療において必要不可欠です。 今後もその重要性は益々高くなると受けとめられています。 当科の理念にあるように、最大の診療効果を最小の侵襲で得るため様々な手法を用いています。

放射線科診療は大きく分けて、画像診断、Interventional Radiology(IVR :放射線診断手技の治療への応用)、 さらに放射線治療 の3つのサブスペシャリティに分かれます。

(1)画像診断:放射線医学の基盤であり、全ての放射線科医に求められる診療行為です。 病院内で施行された種々の検査(単純X線写真、CT、MRI、造影検査、核医学、超音波など)で得られる画像を対象として、 その読影を行い、画像所見を診断レポートとして臨床に提供しています。

放射線科画像診断医は得られた画像所見を元に、患者さんの今後の診療方針(確定診断のため必要な検査の提案、 治療効果の判定や治療方針の変更など)についても適切なアドバイスを行うコンサルタントの役割も果たします。 各診療科の主治医にとってよきコンサルタントとなるには深い専門知識と幅広い医学知識が必要であり、 そのような人材を育成する目的で放射線科専門医制度が設けられています。

(2)Interventional Radiology(IVR):画像診断に用いる手技を治療に応用する分野です。 血管造影検査の手技を利用した動注化学療法や経皮血管拡張術、経皮血管塞栓術、経皮血栓溶解療法、 また超音波やCTを用いた経皮的生検・穿刺・ドレナージ、 腫瘍に対する経皮的エタノール注入療法(PEIT)やラジオ波焼灼術(RFA)を行っています。

IVRの最も大きな特徴は一般的な手術療法と比較して患者さんへの侵襲が低いことであり、 我々は患者さんへの侵襲をできるだけ減らして高い治療効果を得ることを目標としています。 例えば救急医療においては、外傷性出血に対する血管塞栓術や、血栓性動脈閉塞に対する血栓溶解療法などが大きく貢献しています。

(3)カンファレンス:
放射線科医と他科主治医のコミュニケーションを密にするために、定期的に各臨床診療科および病理診断部とのカンファレンスを開催しています。 カンファレンスで得られた臨床的な情報(病理診断結果、手術所見、治療経過)をフィードバックすることで画像診断の精度向上を目指しています。

(4)病棟診療:
放射線科は固定病床を有していませんが適宜IVR治療患者の入院診療を行っています。

(5)県内外での勤務:
近年の放射線診療機器の急速な発展と普及により、本邦においては放射線科医の需要が急増しています。

当科では、島根県内の基幹病院の他、県外の中核病院にも放射線科医を派遣しており、 派遣先では画像診断、IVRの各分野で臨床診療に幅広く貢献しています。

また,県内各地の病院に非常勤医師を派遣し、画像診断、IVRの診療支援を行っています。

(6)女性医師の処遇:
放射線科医における女性の割合は全国的に増加傾向にあります。放射線科の業務の特殊性、需要の増加から、 女性医師が結婚・出産後も、家庭を持ち、子育てを続けながらも放射線科医としての業務を続けることが可能となってきており、 これが放射線科を選択する女性が増加している一因と考えられます。

当科出身の女性医師でも、大学教員や臨床病院の診療科長、常勤スタッフとして第一線で活躍している医師の他、 育児と診療を両立させて画像診断医としての業務を続ける医師まで業務形態は様々であり、個人の事情に応じた勤務環境の選択が可能となっています。

後期研修プログラム

後期研修プログラムは初期卒後臨床研修において基本的な診療能力を身に付けたレジデントを対象に、 放射線医学の広範な知識取得と専門的な診療手技の習得を目的としています。

当科での後期研修には、一般入局あるいは大学院入学を前提条件とします。 一般入局者は臨床経験の蓄積と放射線科専門医の取得を当初の目標とし、 大学院入学者はこれに加えて臨床研究、論文作成を行い在学中の学位取得を目標とします。

一般入局

一般入局者には島根大学附属病院放射線科および県内外の研修協力病院でのローテーション研修を課し、 幅広く内容の濃い臨床経験の蓄積を目標としています。

後期研修の1、2年次は放射線医学の基盤となる画像診断学の習得を目標として研修していただきます。 画像診断の基礎を習得した後に、IVR、放射線治療の研修を行い、最終的にバランスのとれた放射線科医になれる指導体制を整えています。

一般入局者は後期研修期間中に放射線科医としての自らの適性を見極め、画像診断、IVR、放射線治療のなかから、 自分の専門分野(サブスペシャリティ)を選択、その後は自らの適性に応じた診療に従事していただきます。

後期研修での到達目標
  1. 放射線の基礎:単純X線写真、CT、 MRI、核医学の原理や適応の理解。
  2. 画像診断:画像診断レポートの作成(全症例専門医のチェックを受ける)。
  3. 造影検査:各種造影検査の手技、造影剤の知識(適応・副作用・禁忌など)の取得。
  4. 超音波検査:超音波検査の手技習得。
  5. IVR:血管造影の基本手技習得。
  6. 病棟診療:入院患者を受け持ち、診断確定から治療(主としてIVR)を担当。
  7. 放射線防護:放射線被曝や防護についての知識習得。
  8. 臨床研究:症例報告、学会発表、自分が担当した症例に関する論文作成、学会報告。
勤務環境

研修医の研修内容は全て専門医の指導下にあり、専門的知識と診療手技の取得を目標とした研修を行っています。 診療各科と定期的に行っている合同カンファレンスや勉強会に出席、発表することで、 臨床医学に関する幅広い知識や経験が得られます。 島根大学医学部附属病院は放射線科専門医、核医学会認定医の指定研修病院であり、専門医・認定医の申請時に必要な研修履歴が取得できます。

専門医制度

放射線科専門医試験は一次・二次試験の2回の試験からなり、一次試験は後期研修3年目 二次試験は5年目に受験可能となります。 二次試験では専門性に応じて「診断・核医学」部門および「放射線治療」部門のいずれかを選択受験し、 合格すれば放射線科専門医としての資格が取得できます。

臨床研究

当科では各サブスペシャリティのチーフを中心に臨床研究を行っています。 一般入局者でも臨床研究に積極的に参加して研究業績を積むことにより、 大学院入学者と同様に学位取得が可能です。

主な研究内容
画像診断
  • 最新の高磁場装置を用いた中枢神経系・泌尿生殖器系のMR診断(スペクトロスコピー、機能MR)
  • 県内関連病院と連携した遠隔画像診断支援
IVR
  • 肺癌のラジオ波治療の研究
  • 細径カテーテルによるHCCのTAE、新規抗癌剤の臨床的有用性の検討
  • 経頚静脈的肝静脈門脈シャント術

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大学院進学

目標

大学院進学者は、研究者としての基礎的素養を身に付け、 在学中の学位取得を目標に研究を進めると同時に放射線科専門医資格の取得を目指す。

研究テーマ、研究環境

研究開始に当たっては、本人との十分な相談の機会をもち、各個人の適性に応じた研究テーマを設定する。 本人の希望があれば国内留学や基礎医学講座での研究、社会人大学院への入学なども可能であり、 研究に専念できる環境を整える。

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留学

国際的視野を持った放射線科医の育成を目標として、留学先を斡旋しています。

最近の留学先
Georgetown University, University of California at SanFrancisco, MD Anderson Cancer Center

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後期研修でローテーション可能な病院

島根県内
島根県立中央病院、松江生協病院、大田市立病院、益田赤十字病院、済生会江津総合病院。

島根県外
横須賀共済病院、兵庫県立粒子線医療センター、天理よろづ相談所病院、倉敷中央病院。

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